その32
ホントにウソな話ですが、
わたしは指名手配犯とお茶を飲んだことがある。
地元の有名なチェーン珈琲店に呼び出されたわたしは、小さな新聞の切り抜きを見せられた。
『大麻栽培、道内史上ワースト1』
などという文字が紙面には躍っていた。
彼は北海道の山奥で大麻を大量し、警察に追われているらしい。凶悪犯でもないのに指名手配になったのは、そのヴォリュームのためだ。少量ならまだしも、末端価格が億を超えるほどだったため自分で使用ではなく売買目的と見なされた。
彼は日本中を逃げ回り、各地に隠れ住む怪しい仲間のところを点々としていた。
ある時、ある山小屋の仕事にありついたのだが、そこでの初勤務の夜、その山小屋が何故か炎上し、勤務地も住処も追われた彼は、そのまま巨大なリュックを背負ったまま暗い森に消えていったという。