その27
ホントにウソな話ですが、
わたしは一時期、明晰夢を見る訓練をしていた。
明晰夢とは、自覚夢ともいい夢の中で「これは夢だ」と自覚することだ。
訓練のピーク時では、ある程度の確率で明晰夢を見ることができるようになってきた。
夢の中で、ある瞬間、ここは夢の中だ、と気付く。
そうすると夢を自由に創造できるようになる。夢をコントロールできるようになるとまず何をするかというと、ほぼ二つに絞られる。
ひとつは空を飛ぶことだ。
もうひとつはセックス。
わたしはその二つを夢の中で楽しむことに習熟した。やがて欲張りで横着者のわたしは一度のその両方を実現することを試みた。
空を飛びながらセックスをする。それは精密な集中力を必要とする非常に難易度の高い行為だった。
理想の異性を創造して交わりながら、空を飛ぶ。それは、たとえるなら車を運転しながら、お手玉をするようなものだった。
神業とも言える集中力で空中性交を続けたのはほんの十数秒だったろうか。
すぐにイメージは崩れ、空中浮遊が乱れはじめた。もがくように宙を泳ぐわたしだったが、不思議とセックスはやめなかった。しかし、急速に高度が落ちていく。
ついにわたし(たち)は、湿地帯に墜落した。落ちた場所が泥沼だったのは、無意識に墜落のショックを軽減するためだったろうか。
身体にリアルにショックを感じながらわたしは眼を覚ました。
と、同時にオルガズムに達したわたしは、衝撃と快感に板挟みになった複雑な感覚に打ちのめされながら、ベッドの中でひとり苦笑いを浮かべた。