ホントにウソな話

100個の嘘を書きためていきます。

その26

ホントにウソな話だが、

 

わたしは「愛」がつく県の主要都市で生まれ育った。

その中でも治安の悪い荒れたエリアで新聞配達をしていたのだが、雰囲気の悪い団地を一軒一軒回って集金するのはなかなかの難事業だった。

 

場末の薄汚い団地には、一癖も二癖も連中が揃っている。


中に、いつも「兄ちゃん酒を飲んでけ!」と誘ってくれる老人が居た。

歯の欠けた独居老人で、その佇まいはとうていカタギな人生を歩んできたとは思えなかった。集金中で大金を抱えていることもあり、いつもお断りするのだが、ある日、一度は酒をご馳走になってみようかと老人の部屋を訪ねた。

 

老人の部屋には夏だというのに炬燵があり、そこにグラスを用意してくれ、わたしは老人と焼酎を飲んだ。

 

なんということはない会話を小一時間ほど続けているうちにだんだんと酔っぱらってきた。

 

「あっちにエロビデオある。見るか?」

 

老人が、そう言って指さしたのはどうやら寝室らしい。わたしは濃い焼酎の入ったグラスを片手に部屋を移動した。

 

老人はビデオをセットし、わたしとベッドに並んで、画像の荒いアダルトビデオを眺めた。

 

そのうちわたしは眠気に襲われ、ベッドに倒れ込むと、やがてまぶたが落ちていった。

 

数分、あるいは数十分眠ったろうか、身体に違和感を感じ眼を覚ますと、なんと老人がわたしの股間をまさぐっていた。

 

わたしは老人をやんわり制止したが、老人はわたしに「黙っとればわからん」と意味不明の弁解をした。

 

「すぐ終わるが」

「zzzzzやめろや」

 

安い酒が回ったのか、わたしはどうも意識がはっきりしない。

 

ぶつぶつと抵抗していてもラチがあかない。老人はわたしのベルトを外し、ズボンを脱がした。パンチに手がかかったあたりでわたしはサイドテーブルにあったアフリカ風の木彫りの像を手に取った。

 

そして、わたしの股間に顔を埋める老人の頭にその原住民風彫刻を勢いよく振り下ろした。

 

老人はそのままベッドの上で動かなくなり、わたしは身を引きずるようにして部屋を出た。

 

わたしは団地の茂みで胃の中のものを思いっきり吐いた。未消化がエビが出てきたのを憶えている。

 

その後、そのアルバイトを辞めてしまい、二度とその老人とは会っていない。

 

老人がもし生きているとすればゆうに100歳を越えているだろう。