その22
ホントにウソな話ですが、
中学時代、うちのクラスではいじめが横行していた。
恥ずかしいことだが、わたしは加害者として関係していた。
K君という男子がいつも標的になっていたのですが、クラスの男子は面白半分に女子もいる中で彼の制服を脱がし真っ裸にして笑っていた。
当時、どうしてそんなひどいことができたのかといまでもクズだった自分を呪わずにはいられない。
定年間近だった担任の先生は学級崩壊しかけたクラスでやんわりとわたしたちをたしなめたものの効き目はない。その先生もいまでは亡くなってしまったらしい。
K君はあの日々をどんな気持ちで過ごしたのだろう。
その後、人生の中で因果が巡り、わたし自身も人に苛まれることもあり、ようやく人の痛みに共感する素地ができた。情けないほど遅すぎる学びだった。
卒業20年後の同窓会にもちろんK君が顔を出すことはなかった。会ったとしても謝罪の言葉をいまさら告げる勇気があったかどうかわからない。卒業後の行方はまったく知らない。
わたしはただ彼の幸せを願う。身勝手な言い草だが、わたしたちが曇らせてしまった笑顔を、取り戻してくれていたらと思う。償いようのない事を仕出かしてしまったことをいまでもわたしは悔いている。
だから、アレとは逆のことを、できるだけ他人の孤独を和らげ、安らぎを差し出せるように努力しているつもりだ。
後ろめたさに耐えきれなくなるとわたしはいじめのリーダー格だったMに手紙を出した。
「わたしたちは生きている価値がない。死ぬべきだ。クラスメートにあんな仕打ちをしたのは一生拭い切れない罪だ」と。
何度出しても返事はなかった。
最後の手紙から数年後、Mは40歳に届かぬ前に、白血病で亡くなった。