ホントにウソな話

100個の嘘を書きためていきます。

その3

ホントにウソな話ですが、

 

ある時、同性の友人と夜遊びしていたが、何もすることがないのであるクラブに入った。はじめての場所だったがなにか様子がおかしかった。

 

どこがということはないが全体的に違和感を感じていた。ナンパなどをしようと声をかけてみるもどうにもうまくいかない。うまくいかない以前に空回りしている。まったく相手にされないどころか場違いなやつという眼で見られるのだ。

 

やがて気付くのだが、それもそのはず、そのクラブイベントはレズビアン・ゲイのイベントだった。ナンパなど成功するはずもない。わたしたちはすごすごとクラブを後にした。

 

朝方になり、仕方なく、わたしたちはなんの収穫もないまま帰路についた。途中、小腹が減ったので某牛丼屋さんに入ったところ、店内には二人のオカマがいた。

 

後姿でもわかるガタイよさ。しかしファッションは女性のもので、しかもその二人は離れた席に座っており、面識もなさそうなのだ。

 

クラブのあった場所からは離れた店であり、あのイベント界隈の人間ではないことは確かだった。

 

今夜はジェンダーマイノリティの方と出くわす、そんな不思議な夜なんだと腹をくくった。オカマたちは湯気の立つ牛丼をもくもくと口に運んでいた。

 

わたしたちも牛丼を頼んだ。

 

店内に他に客はいない。すると外から50代のお客が飛び込んできた。何やら手に蠢く黒い物体を持っている。

 

「カブトムシおった。そこの樹ィに」

 

どうやら街路樹にカブトムシを見つけたらしい。午前4時くらいだった。カブトムシが出現する時間帯なのかもしれないが、そこはわりと市街地から近く、周囲に自然が多いというわけではなく、長年住んでいてもカブトムシなど見たことがなかった。

 

店員は「そんなものを飲食店に持ち込むな」とおっさんと言い合っている。もっともな言い分だった。おっさんはカブトムシを捕まえた嬉しさに近場の店に飛び込んでしまったようだ。

 

おっさんと店員もとりたてて面識はないようだった。オカマたちはカブトムシのおっさんに動じることもなくお茶をすすっていた。

 

わたしたちは「今日は何か変だ。寝てリセットしよう」と小声で話し合い、手早く牛丼を平らげ家路についた。